DULL-COLORED POPの「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」を観て、脳天を打たれたような衝撃が走った。

「とんでもないものを見てしまった・・・。」

観劇後、新宿までゆっくりと歩きながらそう思った。

様々な演劇を見たけども、これほどまで、脳にハンマーを打ち付けられるような衝撃は初めて。

この舞台は、英雄が出てきたり、世を揺るがす出来事は起きない。

とても日常的なお話で「誰にでもありうるお話」というものでもある。

そして、日常だから、その裏の「歪み」みたいなものを痛感した・・・。

新宿のサンモールシアター

DULL-COLORED POPの「あつまれ!『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』まつり」

公式HP

あらすじ

父が死に、母は2匹の猫を飼い始めた。母・よし子、61歳。プロのお母さんとして生きてきた彼女の人生にきらめく、ステキにまばゆい思い出たち。しかしその裏側には悲しい過去が隠されていて、そいつを猫たちがじゃんじゃん暴いてく──。だって僕たち、猫だもの!

感想

主人公はプロのお母さん「よし子」。何でも完璧にこなすお母さん。

とても仲が良くて、温かい家庭に見えた。

ある時、お父さんが死んで、今まで家族で歩んできた過去を少しずつ振り返る。

その時、二匹の飼い猫が、まるで過去のお母さんを追体験するようにふるまう。

「善意」

お母さんが抱えているものは、悪意の塊のような「善意」

家族は過去の回想の中で「善意」を受けていく。時にはあきらめ、時には絶望し、時には嫌悪感を出して離れていく。

「お母さんは何も悪くないんだろうな。多分、それが正しいと教わってきたから。それがよいことだと信じてきたから。」

僕は、そんなことをぼんやりと考えていた。

・大学を中退し、演劇の道を目指した長男。

・良い大学にいって勉強したい長女。

・仕事はもうたくさんと言う父。

母親からみれば、全部間違っていた。「私が一番正しいの!」

正しいことって何だろう。

「過去」

二匹の猫に暴かれる過去。

お母さんと、お父さん、娘、長男。いろいろな過去。

苦悩しながら、前に進んだり、あきらめたり、涙したり。

それぞれの人たちが置かれている立場やシチュエーションは驚くほど心に刺さった。

なんだか、自分自身を舞台に見ている気がした・・・。

結末は幸せな形じゃないかもしれないけど、「これでもいいんじゃないかな」と思った。

もし気になったなら、結末をその目で確かめてみてほしい。

悲劇?喜劇?

さて、ここまで書くと、人間ドラマのようなドロドロしい作品に見えてきますが、この舞台、とてもポップで明るいです。

いくつも笑えるシーンが出てきます。

舞台の始まりは、かなり度肝を抜かれましたし(ネタバレなので、実際に行って確かめてみてください!)

観ていてとても楽しくて、笑えるからこそ、時々フッと現れる闇は、明るさと対比して生々しさを醸し出しているのかもしれません。

「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」に描かれているのは、団塊の世代の過ちです。女性に家事と母性だけを押し付け、女性たち自身も良き主婦であることだけを理想としてしまったことに起因する「存在の苦痛」が描かれている。登場人物の母・よし子は戦後日本の生んだ怪物なのです。
団塊の世代を生きた方やその子・孫の代の皆さんに是非観て頂ければ幸いです。

団塊の世代の過ち描く、ダルカラ代表作4バージョン同時上演が本日スタート

4バージョンの演出

僕が見たのは谷賢一さんが演出するチーム。

キャストさんは以下の皆さまです。

東谷英人、井上裕朗、大内彩加、塚越健一、春名風花、深沢未来、宮地洸成、百花亜希

他にも東谷さん、百花さん、井上さんが演出するバージョンがあり、全部4バージョンの演出!!

2月18日現在、19時の回が売り切れになるくらい大人気です!!

(一応、当日券が5席ほど出るらしいですが)

また、追加公演が2月24日に決定しました!!

【追加公演決定!】
2/24(日)12:00~百花チームの追加公演が決定しました!
2/24(日)15:00~東谷チームの追加公演が決定しました!
2/24(日)18:00~井上チームの追加公演が決定しました!

チケットの予約はこちらの公式HPからできます!

DULL-COLORED POP携帯予約ページ

劇場までの道のり

場所はシアターサンモール新宿

最寄り駅は東京メトロ丸の内線新宿御苑前駅

2番出口から出て徒歩3分です。

最後に

まだ、谷賢一さんのバージョンしか見ていなくて、とても恐縮なのですが、このバージョンは20代後半~30代の方に特に見てもらいたいなと。

僕みたいに、頭に金づちを打たれたような衝撃があるかもしれません・・・。

「幸せって、何かしらねえ?」

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