「ぼたん雪が舞うとき」は、静かに、でも鋭く心を揺さぶる作品でした。

スタッフの竹森裕哉です。

先日、劇団青年座の「ぼたん雪が舞うとき」を見に下北沢まで行ってきました!今回は、青年座所属で、メンターでもある平尾仁さんからのご厚意で「ぼたん雪が舞うとき」の観劇に招待いただきました。

1.青年座について

劇団青年座は、西田敏行さんや、高畑淳子さんを輩出した、1954年から続くメジャー劇団です。書き下ろしの創作上演を中心とした「創作劇の青年座」としての地位を確立しております。

劇団青年座のHP

劇団青年座 wiki

青年座は、普段は渋谷区富ヶ谷の「青年座劇場」で公演を行いますが、現在、青年座劇場は2018年から改修中で、数年間は使えません。

今回の公演は下北沢の「小劇場B1」を借りています。

2.小劇場B1と本田劇場グループの場所

この小劇場B1ですが、本多劇場系列です。

本多劇場グループは本田一夫氏が、役者を目指す若者たちの夢の力になりたいという思いから創られた、下北沢が演劇の街となる土壌を固めた劇場をはじめとするグループです。

本田一夫氏 wiki

下北沢には本多劇場グループの劇場がたくさんあります。地図でまとめてみました。

本多劇場の公式HPはこちら

今回の「小劇場B1」ですが、2014年2月に開場した、本田劇場系列で、最新の劇場です。(本多劇場は1982年11月に開場)

2018年8月27日時点で、下北沢駅と駅前の大規模な改修と区画整理が行われており、仮の北口と新しくできた南西口しか使えず、南口は使えなくなっています。もし、「小劇場B1」に行くのであれば、北口から目指すのが最短ルートとなります。

前置きが長くなりましたが、今回の「ぼたん雪が舞うとき」について、色々感想を言えればと思っています。

3.ぼたん雪が舞うとき

青年座は、チェルノブイリ事故の時、「風が吹くとき」を上演しています。

風が吹くとき wiki

「ぼたん雪が舞うとき」は「風が吹くとき」を踏まえながら、今回は2011年3月11日の東日本大震災からの原発事故をモチーフにした創作劇として上演しています。そのため、「風が吹く時とき」との共通点もいくつか見られます。

・公演情報

公演は9月2日まで。最終の金土日以外は14時~か19時~の回の一日1公演です。

値段は

一般 4,500円 全窓口
U25割引(25歳以下)3,000円(青年座のみ取扱)
リピート割引4,000円     (青年座のみ取扱)
3組セット割引12,000円  (青年座のみ取扱)

前売りは土日売り切れの日もあります。すでにチケットぴあ、イープラスは売り切れなのでチケットを取るならこちらのネット予約です。

劇団青年座チケット予約フォーム

https://www.quartet-online.net/ticket/botanyuki

ローソンチケット

http://l-tike.com/order/?gLcode=34907

・あらすじ

ある日、未曾有の大地震が起こった。津波によって原子力発電所が損壊。
すぐさま半径20㎞~30㎞圏内の住民に屋内退避指示が出された。
夫婦は、政府の指示を忠実に守り、電話も電気も水道も止まった家の中で、
二人だけの避難生活を始めることになった。
これは、立入禁止区域に取り残された夫婦の一週間を描いた物語である。

原発事故がモチーフの青年座「ぼたん雪が舞うとき」開幕、回替わりで3組の夫婦が登場

青年座のインタビューはこちら

ニュースの記事でも紹介されております。

青年座「ぼたん雪が舞うとき」 「避難弱者」の視点で鋭く=評・濱田元子

舞台は2011年の3.11を題材にしたパラレルワールドです。

「ぼたん雪が舞うとき」独自の特徴として設定、ストーリーは全く一緒で、A組、B組、C組と3組の演出家と俳優がチームを組んでおり、それぞれ異なる演出や演技での舞台が見られます。私が見に行ったのはC組、メンター平尾さんが出演する回です。

※ややネタバレあります

・震災で辛くても前向きに生きるというテーマですが・・・

未曽有の大震災が起きても前向きに明るく生きよう。困難があってもなんとかなるだろう、という夫婦が主人公です。

3.11で原発から30キロ圏内に住んでいた夫婦は、屋内退避指示を受け、指示が解除されるまで地震で電気と水が止まった自宅で待ちます。時には夫婦の思い出に花を咲かせたり、娘はどうしているかを話したり、昔の結婚式をや思い出をアルバムを観ながらゆっくりと話し合い、夫婦の絆を確かめ合います。

ですが・・・

・日常の明るさと非常事態の深刻さの対比が胸に刺さる。

夫婦は原発が大変なことになったらしたら、自衛隊や警察が助けに来てくれるだろうと思っています。いずれ電気も水道も復活し、数か月もしたら、いつもの平穏な暮らしに戻るだろうと。

ですが、そんなことは一切ありません。自衛隊や警察がそもそも「来ない」のです。なぜなら、すでに避難誘導が終わったものとみなされ、夫婦が住んでいた場所は立ち入り禁止区域に指定されています。だからどれだけ救助を待とうとも来ないのです。ところが主人公たちは、停電から、携帯もラジオも電池が切れ、そのような事態を知りません。放射能が広がり、立ち入り禁止区域に取り残されていることなど、誰も知らないのです。

配給された物資と家の中に残された食料を食いつなぎながら、救助がいつか来るだろうと、昔話で盛り上がったり、懐かしいアルバムを見たりする生活は、救助が絶対に来ない事実との対比で胸に刺さります。追い打ちをかけるように、妻は心筋症を患っており、あまり外に出れない上に薬が必須。それなのに車は地震でがれきの下です。

放射能汚染の可能性がある中、二人で外に出ることもできない。絶望がゆっくりと迫ってくるのです。

・現代日本であり得る臨場感

この話は「風が吹くとき」と共通する部分があります。「風が吹くとき」は、核戦争が勃発した中で、シェルターに閉じこもる老夫婦の話です。核戦争と聞くと、どうしてもフィクションの世界の話であり、非現実的になりがちです。しかし今回の「ぼたん雪が舞うとき」は日本で実際に起きた事故をもとに創作されたものです。そこには、明日、もしかしたら起きるかもしれないという臨場感や、リアルに想像できる場面や情景があります。

・災害に対する危機意識の命題も込められている

原発を題材にしたこの話ですが、私は、日本の災害と危機意識に対する想いも同時に込められているのではと感じました。もし、事態をもっと重く考えて、すぐに緊急避難していれば・・、大丈夫だと、たかをくくらずにいれば・・・という教訓も込められているのではないでしょうか。

深刻な事態になってから、初めて冷静に考えたら、もう手遅れだった。これは、原発じゃなくても、大雨による水害、土砂災害などでも考えられるのではないかと思います。「まだ大丈夫」と考える人は多いと思います。でも、災害を甘く見てしまったがゆえに、逃げ遅れてしまったらどうなってしまうのか。「うちは大丈夫だろう」そんな方には、ぜひ見てもらいたい作品です。

まとめ

劇団青年座の「ぼたん雪が舞うとき」ですが、C組の平尾仁さんと共演者の井上夏葉さんの演技に圧倒されました。序盤から30年間連れ添った、本当の夫婦のようなやりとりを見せてくれます。思い出話に花を咲かせるシーンも、娘はどうしているかなと考えるシーンも、30年間の思い出を本当に振り返っているように感じます。だからこそ、危機が目の前まで迫ったとき、二人が夫婦の愛を確認する最後のシーンにも見えてしまう。ものすごく胸が切なくなってしまいます。

シナリオクラブでは普段見せない、本気の舞台の姿です。もし、本気の平尾さんがみたい会員さんは、是非とも舞台へ!!また、いつも舞台で本気の平尾さんを観ている方は、ぜひともシナリオクラブへ。普段の平尾さんと会うことが出来ます!

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