現役の舞台俳優に公演のフライヤー、地方公演、日数などの裏側を聞いてみたよ。

先日、Twitterで演劇を見に行かない理由というアンケートがありました。

ちょっと興味深いアンケートだったので、今回は現役の舞台俳優に色々な話を聞いてみました。

>>以下引用

フライヤーから読み取れる情報が少なすぎる
→どんな話なのか一切わからない
→事前情報が少なすぎる
→あらすじ、キャスト、テイストがわからない場合が多い
付随して
面白いかどうかもわからないものにお金を払えない
→宣伝力が足りてない
→逆に間違いないと思える作品(劇団四季など)にはお金を払える
演劇のほとんどが東京なので地方に住んでいると見に行くことが難しい
→交通費、宿泊費、時間のねん出が困難
→地方公演が少ない
チケットの取り方がわからない

演劇の情報はここの劇団、団体で行っているので、どこで調べればいいかわからない

コミュニティが閉じていて、排他的な印象を受ける
→知識やマナーがわからないし、身内ノリがひどい(初見だと近づけない
子連れ世帯にはいくのが難しい
演劇というものに縁がない
→見たことがあったとしてもつまらなかったから二度と行かない。

インタビュー前に、アンケートについて

要するに、身内感と、演劇内容の不明確さが行かない理由なのですが、この内容、前提がそもそも見に行かない人にアンケートが回答していると思われるので、(見に行く人が「見に行かないアンケート」に回答するかどうか)ネガティブな部分が多くなるのは仕方がないことかもしれません。

ただ、わかりづらいフライヤー、公演日数の少なさ、地方公演の少なさ、、なんとなくある気がする身内感にもやもやするのはよくわかります。そのため、今回は現役の俳優であり、シナリオクラブのメンターでもある清家栄一さんに、裏事情や、どうなっているのかを聞いてみました。

清家栄一 プロフィール

テレビ・映画出演を経て、1976 年蜷川幸雄演出の「オイディプス王」で初舞台。
以来、「王女メディア」「近松心中物語」「天保十二年のシェイクスピア」「ハムレット」「リア王」「ロミオとジュリエット」「オセロー」等の彩の国シェイ クスピアシリーズ、「ファウストの悲劇」「血の婚礼」「祈りと怪物」「元禄港歌」など、蜷川幸雄氏の絶大なる信頼を得て、蜷川作品に最多出演。シナリオクラブ・チーフアドバイザー。

NINAGAWA STUDIOのプロフィールページ

清家栄一インタビュー

清家氏のインタビュー

演劇のフライヤーが分かりにくいのは何故なのか

清家:演出やストーリーをフライヤーでネタバレしたくないというのがあるのかな。舞台で驚かせたいので、フライヤーでは多くは語らないようにというのはあるかもしれない。

フライヤー作成って、かなり前から準備して作るんですが、実は、フライヤー作成中や作成後に稽古が始まることが多いんですね。台本があるんで、ストーリー自体は変わらないのですが、稽古をこなしていくと「やっぱりこっちがいいな!」って舞台の演出や雰囲気が変わっていきます。作品作りってそういうことが多いんですよ。だからフライヤーを作ったときに表現できる内容は少ないかもしれない。

フライヤーを作る段階でしっかりと話が決まっていて、最後までそのままでいく場合だと、フライヤーにしっかり情報を載せられると思うんですが。フライヤー作る段階で、誰も話が分からないってケースも・・・。台本そのものも序盤しか決まってなくて、ストーリーも未定。おーい、今日の分の台本、できたぞ~なんてね。笑。だから稽古の最後で、全体の雰囲気が変わるケースもあります。

動画で宣伝してみるのは?

映画のように動画で宣伝できたらいいんですけどね。でも、動画撮影しようにも、稽古段階だとセットや衣装がまだで、それを撮影して予告になるか難しいです。中には、稽古段階ですべて準備する演出家もいますけど。

あとは観客のキャパシティの差もあるかもしれません。最近ではライブビューイングみたいに、映画館でライブ配信している2.5次元のような形態もありますが、基本は1つの劇場の観客席が満席になってしまったら、それ以上は入れられないです。

役者のスケジュールが決まってて、そこから公演日数も決まっているので、映画みたいにヒットしたら期間延長なんてことも基本的にはできません。予算の問題もあって、大々的に動画を作ってCMというのも難しいと思います。

そのため、どうしてもチケット代が高くなるのかな。情報がお客さんに任せなのはなんとかしたいですけどね。

 

地方公演が少ないのも予算の問題?

地方公演の場合、滞在費などはほとんど主催者が出しているんです。なので、集客も考えると長く滞在できないのです。
公演も、今だと都内で20日くらい、地方だと4~5日くらいかな。地方と言っても、大阪や名古屋みたいな大都市がほとんどだけど。
東京でも昔は一か月くらい公演が続いていたんですが、最近公演日数が減ったのも、観客が減った事が関係しているかもしれません。
また、地方公演の場合、そもそも上演できる会場が限られていて、交通の便が悪くてもそこでやるしかない、ということもあります。
上演できる劇場が限られるというのは、劇場が大きすぎると役者が遠すぎて豆粒しか見えず、結局なんだ?てことになってしまいます。演劇は顔の表情や細かいしぐさも作品です。役者の汗が見えるくらい近さだと、とても臨場感があって面白いですよ。

演劇の敷居や身内感について

先入観だと思います。初見お断りというのはないです。
観劇マナーというのも映画館みたいに上演中はスマホをいじらない、私語をしないといった基本的なものです。
コアなファンがいる場合は、ファン同士の暗黙のルールはあるかもしれませんが、一般の人は気にせず見に来てほしいと思います。

色々大変だけど、それでも演劇を見に行く魅力は?

演劇は「今この劇場でしか上演していない」から見つけにくい。でも逆に言うと、この俳優、この作品をこの瞬間にしか見えないというのが最大の魅力です。同じ作品でも日によって違う。まったく同じものは二度と見れないですから。

また、演劇は視線誘導の技術が醍醐味の一つです。たとえば映画だと、場面の切り替えや視線誘導はカメラワークや編集の仕事ですが。生の舞台ではカメラワークはありません。何百人の観客の視線を上手く誘導する技術が求められます。
もし演劇を見てみたいと思ったら、ハズレを避けようとするより、興味を入り口にするほうがよいかもしれません。
好きな小説が舞台化されたとか、好きな俳優が出ている、みんなが面白いと言っているから。という入り口でよいと思います。
なので、好きなものが舞台化されたから行こう。そんな気持ちで行ってくれたらうれしいなって思います。
値段も高いので、気軽に街角でみて「これやっているじゃん、見ていこう」というのも難しいかもしれない。
でも、たいてい、当日券を販売しているので、もし、ちょっと面白そうと思ったらぜひ観てほしい。演劇は実際に観ると、本当に臨場感や迫力に圧倒されます。

まとめ

チケットの値段が高い

これは、ライブであること、臨場感を大切にしていることがあるようだ。
でも、その分、絶対その時間しか観られないレアな体験ができる!!かな。

地方公演少ない

地方公演が少ないのは、本当です。東京は恵まれているんですね。

フライヤー含めて情報がなさすぎる

劇の情報が少ないのは、広告と舞台の製作時間のギャップが大きいかも。
これは、もう少しわかりやすく告知してほしい。

演劇の身内感

場所によってはあるのかもしれないけど、役者のほうは気軽に来てほしいそうです。
自分も演劇を初めて観る前は「高い!」と思っていたのですが、面白い作品を観てから、しっかり演劇ファンになってしまいました!!

「演劇に興味はあるんだけど・・・」と迷っている方の道しるべになればと思います!

スタッフブログに戻る