阿修羅―浮き草稼業の女―

作・演出/岡部耕大
演出
美術/寺岡崇
照明/小林隆志
音響/三木大樹
殺陣振付(殺陣)/車邦秀
チラシイラスト/小幡隆治
舞台写真/山本悟正
協力/青木久義・劇団空間演技
題字/岡部耕大
舞台監督/青木かづき
キャスト
萩野道子
北川宏美
CoCo華
神林あゆみ
平井彩加
荻野桃香
有賀洋之
今井徳太郎
岡部大吾
小池雄介
小林太一
高橋裕太
西村 壌
橋本利貴
日程
2018年6月29日 (金) ~2018年7月2日 (月)
劇場
新宿紀伊国屋ホール
昭和63年12月から64年1月。昭和から平成となる時代の肥前。(今の佐賀、長崎です)
昭和から平成になる時代、平戸、松浦、伊万里を舞台に旧家の姉妹と女剣劇一座のそれぞれの人生を描きます。
架空の土地肥前合戦原(かっせんばる)の旧家蔵山家の亡き父太蔵の法事に三人の姉妹が集まります。 太蔵は自殺を遂げていますが、実はライバルの千恵蔵の命令で殺されたとの噂もあります。 法事の席では筑紫から流れて来た女旅芸人の一座「筑紫座」も余興に招かれています。
この演劇を見た人
竹森裕哉さん
竹森裕哉さん

おすすめ度
脚本のストーリー性 3
役者の表現力 4
演出の巧さ 2
演出の奇抜さ 2
舞台装置の芸術性 3
客席と舞台の一体感 2
劇場設備の充実度 3
敷居の高さ 2
見た人の感想

日常劇だけど、やや敷居が高めかも。

激動の昭和の終わりに、肥前(今の佐賀、長崎)で起こる、旧家の女性が市長選も巻き込んだ、サスペンス日常劇。
なんとこの作品、全編通してほぼ九州弁!初見でびっくりしました!
主人公の妹、米子の歌唱から始まり、序盤の30分は登場人物がどんどん登場します。
満子の妹達、女旅一座の筑紫律子、勝子、恵子、雑用の五郎、太鼓と踊りの秀太郎、刑事倉崎、巡査の保造、板前の竜二などなど。ガンガン出てくる登場人物と九州弁。最初は人間関係を把握する前に混乱するかもしれません。
中盤の市長選絡みの話となり、津崎と千恵蔵が出てくるところから徐々に話が盛り上がってきます。

序盤から中盤までのストーリー

主人公の満子は、自殺した父の跡を継ぎ、結婚せずに鶴亀屋の女将として切り盛り、地元から愛される女性です。そこに市の合併に伴って市長の座を狙う二人の男。東京帰りの西の津崎、地元の盟主でこれまた市長を狙っている東の千恵蔵。この両者が婦人票を獲得するため、どうにか地元から信頼の厚い「鶴亀屋」の満子に取り入ろうとするお話しです。

見どころ

津崎、千恵蔵のとにかく底意地の悪い悪党二人と主人公満子の駆け引きと立ち回りです。
千恵蔵は、紋付き袴で威張り散らしており、住民票を持っていない人間はゴミクズだと言い切り、金にものを言わせて票を獲得しようとするまさにステレオタイプの悪党。津崎は、東京帰りのスーツでインテリを鼻にかけたような悪人。市のために原発を反対と言いながら、自分が市長に当選したら原発を誘致してやるよ。という二枚舌です。
二人とも婦人票獲得のため、「鶴亀屋」満子に取り入ろうとおもっていますが、票さえ手に入れればこっちのものよという下心が見え見え。その二人の悪党を選挙法違反で張り込む、刑事の倉崎や巡査の保造、でも二人は悪党に比べて頼りなさげ。
悪党二人を相手に、満子は裏で策を練ります。

選挙の時期は、ちょうど満子の父親、太蔵の七回忌。地元から愛される鶴亀屋は法事でも200人を超える人が集まる大イベント!
これはチャンスと、津崎は満子の情を誘い、千恵蔵は賄賂で満子を落とそうとし、両者ともあの手この手で、市長選での票獲得に走ります。ですが、それを迫られる満子は、この悪党二人に大きな因縁があるのです。
津崎の父は太蔵を脅して追い詰め、千恵蔵の父は鶴亀屋のライバルで太蔵を追い詰め、太蔵は二人が原因で自殺したとも、謀殺されたとも言われています。言ってしまえば両者とも父の仇のようなもの。このままでは、どちらの陣営についても憎い仇の手助けになってしまう。
ですが、ここでやられっぱなしではありません。この作品に出てくる女性はみんな強い!
満子は法事の席で、懇意にしている女旅芸人一座「筑紫座」に協力をお願いします。
「私が書いた演目を法事の余興として行ってちょうだい」と。
なんとその演目は、時代と登場人物が違えど、悪党二人に満子の父がどのようにして殺されたかをなぞるお芝居なのです。
この演目中「してやったり」という満子の表情は見どころ!「クックックックック」という声が聞こえてきそうなほど!
津崎も千恵蔵も、演目を見ながらどんどん顔が青くなっていきます。「思いつめた女は鬼にも蛇にもなる」まさにこれが体現された瞬間です。もちろん満子の復讐はこんなものでは済みません。まだまだ続いていきます。

個人的感想

満子が父の仇をめぐる駆け引きが物語の中心です。
でもメインキャラクターとメイン話に焦点が当たり過ぎてて、サブキャラクターが本筋にあまり関わってこないのが残念でした。
暗い過去を持つ流れ者の板前竜二、容疑者に惚れて左遷された刑事、千恵蔵の息子で、すねかじりの臆病な伊右衛門。
旅芸人一座の律子、勝子、恵子、五郎、秀太郎、満子の姉妹の米子、律子、留子と色々なキャラクターがいるのですけどね。
また、序盤が九州弁と登場人物の多さで混乱するのと、後半から終盤、昭和から平成の時代に移り変わる時にイマイチ盛り上がりが欠けてしまうかなと感じました。
ただ、俳優さん達の熱演はすばらしいです!女は強いし怖い。そう実感させてくれる作品です。
もし気になった方は、再演の際に劇場に足を運んでみてください。

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