メンター清家さんに聞く「蜷川さんに怒られたエピソード、ダメな時の乗り越え方法」

こんにちは。スタッフの竹森です。
シナリオクラブのHPが新しくなってから色々なネタを考え中です。
最近は永江さん(Lander Blue)に毎回毎回、色々なネタを出して、「ばっかもーん!」と、星一徹なみのちゃぶ台返しを食らいまくっています。いやぁ、結構大変・・・。

いつまでもへこたれているわけにはいかないので自分なりに色々考えるのですが、考えれば考えるほど、重箱の隅の隅をほじくるようなネタに行きついてしまうわけです。

僕の思いついたひどいネタ一例

1.舞台俳優への差し入れって何がいいのか

「そもそも俳優って差し入れ受け取らないでしょうが。しかも受け取ってくれるならgoogle検索して、その人ごとの好み調べればいいじゃない」と怒られました。

2.劇団員のスケジュールはどうなってるの?

「劇団員って幅広いけどどうやってスケジュール出すの?しかも劇団ごとに違うよね?」と怒られる。

3.世界の劇場の驚くべき施設シリーズ

「いやいや、どうやって調べるつもり?個人ブログや適当な検索で?そんな不明瞭な情報出していいと思っているの?」とボコボコに。

まあネタがひどすぎるので怒られて当然。そりゃそうだと納得して日々ネタを集めています。そんな演劇のド素人で何も知らない僕がシナリオクラブで「僕の出来が悪くて、なかなかうまくいかないんです泣」と、メンターの清家さんに話したら、「ヒロちゃんわかる!!その気持ちよくわかる!蜷川さんとやってた時もそうだったから!!」と、めちゃくちゃ励まされました。

・清家さんも役がつかめなくて蜷川さんに叱られていた。

清家さんのインタビュー話でも語っています。

チーフメンター 清家 栄一

自分が役を上手く表現できないときは苦しかった。そんな時は蜷川さんが僕に何度も何度もダメだししたり。
でも、いつまでもめげているわけにはいかない。どうやるか悩んでいるうちに、何かコツのようなものをつかんで、なんとか壁を破ろうとする。すると蜷川さんが 「お!!つかんだか!?」 とか言ってくれるので、僕は心の中でガッツポーズを決めてました。

この時のように、蜷川さんの求めるものにたどり着かず、何度も何度もダメ出しを食らう姿が僕の姿に似ていたそうで、それで気にかけてくれたそうです。なんて優しい・・

そんな清家さん、蜷川さんと一緒にやっていた時の話の一部を語ってくれました。

蜷川さんについて

・蜷川さんはどんな時に怒りました?

蜷川さんは怒るときは、本気で感情的に激怒していました。でもそれは自分が怒りたいから怒ったわけじゃなく、役者の魅力をきちんと引き出したい、芝居全体をよくしたいというピュアな気持ちがあったんだと思います。
そして「この役者がダメになってしまう」という気持ちがあったんじゃないかな。
また、僕も小さな役や若い時はよく怒られてました。
たとえば「ロミオとジュリエット。」多くの人物の中で、たまたまロミオとジュリエットにスポットライトがあたっただけで、その他大勢じゃない。みんなテーマを背負ってやれというのが蜷川さんでした。
よく雑誌などに「群衆劇が得意な演出家」と書かれてましたが、「俺がいつお前らを群衆扱いした!?」と怒ってましたし、テーマを背負ってやらなかった時はめちゃめちゃ怒られました。

・怒ってくれるほうがいい指導者?

まあ、どんな人間でも怒られないほうがいいですよね。でも、ヒロちゃんが本気で怒られているのを聞いて「ああ、いい指導者なんだな。人生で大事な人と出会ったな」と思いました。蜷川さんと被った部分もありますが、本気で怒るのは本気で向き合っているからですよ。怒ってくれるのは期待を持っているからです。そこは、さっきも言ったように、蜷川さんと一緒に居て、重ねて見えた部分です。まあ、僕も怒られるのは苦手なほうなので、全然できてないと言われるのは結構きつい。せめて「ここは良かった」という、とっかかりは欲しいね。(笑)

・稽古はどんな様子でした?

実は蜷川さんの稽古場にいるほうが、本番の舞台より緊張しました。稽古場はピーンと張りつめていて、物音一つ立てないような場所。そして稽古場は練習しに来る場所というより、自分の作り上げてきたものを蜷川さんに提出する場でした。なので、考えてないと「手ぶらで稽古場来るな!!」って怒られてました。本番の舞台はその稽古場を乗り越えて、蜷川さんからOKをもらった証なんです。

 

清家さんに話を聞きながら。

清家さんに蜷川さんとの話を聞きながら、「そうだよね、本気で向き合ってるからこそ叱ってくれているんだな」という事を痛感しました。優しい人ほど実は相手に何も期待してなくて、とてもドライという話を聞きます。私が永江さんに怒られているのもやっぱり「なんとかしなければいけない」という思われているからだし、清家さんは「まあ今更になってからわかるものが色々あるんだよね」と言っていました。

ここからは僕の個人的な質問。

・「前と言ってることが違う」っていうのは演劇の世界でもありますか?

稽古が進んでくると以前に言われたことと逆の事を言われるようになったというのはよくあります。慣れないととまどいますが、よく考えると当たり前のことなのです。作品が仕上がってくるとしてくると、前回OKもらったものが、次ではNGになることもあります。作品が仕上がるというのは全体のレベルが変わってくることです。そこで前回OKと同じ事をやると、周りは変わったのに自分が変わってないとなります。もうあの時とはレベルが違っているのだから、求めているものも違う。結果として以前と別のことを言うのです。そのため違ったことを言ってないほうがおかしいのです。どんな世界でもこういうことってあると思います。ずっと最初に言ったままなら、自分も周りも何も変わってないということですからね。

・何をやってもNGくらう時、どうやって乗り越えるのか

蜷川さんのところにいて、もがいてもがいてダメだった時って山のようにあるんですよ。蜷川さんは「自分で考えてやれ!」っていうスタンスでしたから、なかなか答えが出ないこともありました。よくやっていたのは、「もうこのキャラにこだわらず、違うキャラでやろう」と僕の中で人物像を全部捨てるんです。これ、できないやと。できないものをこだわり続けるよりいっそう捨てたほうが楽になりますしね。
そのあと、突拍子もないことをやってました。何にもしないでうずくまってたり、舞台の端っこで鰹節削ってたり。そういう人って世の中に居ると思うんですよ。少ないとおもうけど。そうなった時にテーマや人生が背負えて、良くなったことが結構ありました。

・乗り越えられないときはあった?

蜷川さんの劇団の時、どうしようもない芝居をしたり、芝居を見せなかったりすると、その場でクビになることもあったんです。
でも、蜷川さんは僕のことを育てようとしてくれるのを感じましたし、僕はそれに応えられるように芝居をしようと思っていました。だから乗り越えてきたし、本当は蜷川さんが亡くなる前に、僕もとうとうここまで来たよ」と見せたい思いがありました。でも今はもうそれは叶わないのが残念です。

 

まとめ

清家さんや蜷川さんのエピソードを聞いて、その道のプロフェッショナルはやっぱり叱られてるし、期待しているから怒ってるということをめちゃくちゃ感じました。実際、理不尽に怒られたり、八つ当たりは一切なく、極めて論理的かつ正論で叱られています。

確かにいつも叱られるから、たまに褒められると、「よっしゃああ!!」となるんですよね。

「叱るのってエネルギーめちゃくちゃ使うから、わざわざエネルギーを使って叱るくらいなら、ほっといたほうが気が楽」と言う知り合いもいました。何より、全く怒られなくなった時のほうがもっと怖い・・・(諦められたという意味で)

というわけで、これらを戒めにして精進していこうと思います。成長が分かると案外楽しいです。

また、今度は怒られたエピソードだけでなく清家さんから見た蜷川さんはどんな人だったのかを詳しく聞いて記事にできればと思っています。(とても愛に溢れた人だったと語っていました。)40年間、最も身近で蜷川幸雄氏を見てきた人物の一人として、どんな想いがあるのか、詳しく聞きたいと思います。

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