なぜ2.5次元や劇団四季が成功し、一般的な劇団の集客は大変なのか。敷居の低さが関係してるかも

僕は2.5次元も四季も、小劇場も商業演劇も見ます。ところが劇場の客層が全く違う。「何故なんだろう」これがすべての始まり。

以前、2.5次元、劇団四季を除いた演劇市場を調べたとき、年代は30~50代の方が多めでした。

一方で劇団四季や2.5次元は若い方が多め。子連れで来ていたりする。この差は何なんだ。

この2.5次元や劇団四季を除いた演劇のことを仮に”一般的な舞台”と言うようにします。ややこしくなるので

 

昔のブログから、演劇の市場を引っ張りだしてきました。昔は盛り上がってた演劇。

しかし2004年から”一般的な舞台”は劇団数、公演回数が、じわじわ右肩下がりです。

演劇市場

何が起きたかというと、

「インターネットやスマホの普及によって、手ごろな娯楽が急増した。

その結果、コンテンツ同士で、24時間の奪い合いのコンテンツ戦国時代が始まった。

”一般的な舞台”が、コンテンツの時間の奪い合いで、厳しい戦いを強いられた。」

ということかなと。

 

ところが、同じ舞台で比べてみると2.5次元舞台の市場はぐんぐん伸びてます。

2.5次元公演 市場

ラジオで聞いていましたが、2015年から始まったライブスペクタクル『NARUTO-ナルト-』は2019年でも絶賛チケット売り切れだし、テニプリはもっとロングラン。

劇団四季もロングラン作品が多い!!

何故、ここまで差があるのか。

単純に「人気漫画を題材にした舞台だから売れている」とか「ミュージカルだから売れている」ということもあるかもしれませんが、それでも、スマホやインターネットを中心とした手ごろな娯楽が普及しているコンテンツ戦国時代に、勝利を収めているのが2.5次元や劇団四季なのです。

盛り上がっている2.5次元や劇団四季と縮小している”一般的な舞台”は何が違うのか

僕も最初は2.5次元や劇団四季との差は、「人気漫画を題材にしているからかなぁ」と思っていたんですが、実は全然違う。

第一に「フライヤーから情報が読み取れなさすぎる問題」はものすごく大きい気がする。

かつて、別のブログで取り上げたフライヤー問題です。

1.フライヤーから読み取れる情報が分からない → 面白いかどうかが分からないものにはお金が払えない。

2.チケット公演予約が分からない(一般の人はコリッチとか知らない)

などなど。

しかし、このフライヤー問題にはもっと根深いものがありました。

若い人ほど「分かりにくいもの」を毛嫌いする。

さて、ここからちょっと脱線です。情報過多な今の時代、分かりにくいメディアは毛嫌いされる傾向にあります。

その原因が二つほどありました。

一つ目が、情報量の増加と一人の人間が持つ時間の少なさ。

昔と比べて、スマホやネットの普及によって情報量が半端なく増えた。

それに伴い、情報の取捨選択が行われるようになり、こんなメディアも増えました。

・本を読まなくてもそれを書評として要約してくれる

・記事を分かりやすく発信してくれる

・動画でのHOWTOなど

その反面で余暇時間がほとんど増えていませんでした。

日本人の一日の行動時間

この辺りは、演劇市場でも触れたのですが、新聞や本しか見るものがなかった時代と比べて、今はいろんな情報を探しにいけます。同じ時間を使うなら、わざわざ難しいものよりも、簡単で分かりやすくサラッと読めるものか、面白さが裏付けされているものを選ぶ。

それが分かりにくいものや、長いものを敬遠する原因の一つかなと思います。

二つ目は「失敗したくない」という意識。

評価が高くて面白そうな映画を見にいき、amazonでは評価の高いものを買う。

youtubeでも評価の高い動画が見られ、飲食店も点数と口コミを見ながら行く。

何故、点数を気にするのかというと、失敗したくないから。僕もそうです。

今の時代は 失敗=金銭の喪失 ではなく、失敗=金銭+時間の喪失。

しかも一人当たりの所得が減っているので、失う金銭もバカにならない。

失敗したときよく思うのが、「家でゲームやっているほうがマシだった」

コンテンツ戦国時代では、相手の時間をもらう=コンテンツ成功の第一歩です。

「家に居ても何もすることないから出かけよう」という時代は、かなり前に終わってます。

家では、ゲーム、映画、コミュニケーション、仕事、情報収集、ショッピングetc

マジでなんでもできます。しかも家でできることはお金がそんなにかからない。

移動時間もないし、好きな時に中断できる。

失敗しても損失が少ないのです。

一方でわざわざ出かけて、しかも何時間も拘束されるコンテンツ、それが舞台だったりする。

移動時間+拘束時間+お金と、かなりリスクがある。

リスクが大きければ大きいほど慎重になるわけで、それでもコンテンツ戦国時代に勝利するには、面白さが絶対に確約されていないと厳しいです。

ということは「面白いかわからないもの」というのは敬遠されます。

映画でも、フライヤーだけでなく、プロモーションビデオがあってどんな内容かある程度分かり、ワクワク感をそそるのばかり。

一方で舞台はフライヤー1本で宣伝となると、かなり厳しい戦いになります。

確実に面白いと思わせるブランド力がある劇団四季や、漫画原作で面白さが分かってる2.5次元が強いのも納得です。

そして、絶対に面白いから知り合いも一緒に誘えるわけで、「絶対面白い」って本当に大切だなぁと。

敷居をどう低くするか

劇団四季は「確実に面白い」と思わせるブランド力があり、2.5次元は漫画原作を下地にしたうえでキャストのビジュアル公開やポスターなどで確実に面白いというワクワク感を出してきます。

この、「面白そう」感が出れば出るほど観劇までの敷居を低くします。

つまり、「知ってるヤツだけくればいい」みたいな頑固一徹のソバ屋みたいなのがそろそろキツくなってきた時代かもしれない。

とはいえ知名度やブランド力が無い状態で「面白そう」感を出すのはものすごく大変。何故なら知ってもらって興味を持つとこからスタートですから。

じゃあ「面白そう」以外で敷居の低さはどうやったら出せるか。ただ観劇の値段を安くするだけじゃたぶん難しい。

堀江貴文さんのクリスマスキャロルはそのあたりすっごく考えられてました。

堀江貴文さんの「クリスマスキャロル」と「演劇のアップデート」にとても共感した話。

このクリスマスキャロルのすごいところは、

・毎回スペシャルゲストが出る

・食事食べながら観劇OK(軽食も出る)

・気軽に入退席ができる

これで当日いきなり飛び入りしてもOKなら敷居ってものすごく低くなる気がします。

もちろん、毎回スペシャルゲストは難しいかもしれませんし、食べたり出入り自由なら作品は限られてくるかもしれません。

当日飛び入りだって、舞台なら一人あたりの席の重さがものすごく重い。事前予約で、できるだけ席を確保したくなる

でもこういう試みをする団体がもっともっと増えていいと思います。

劇団四季や2.5次元も作品によっては一緒に歌うミュージカルもあります。

チャージマン研なんかは、なんと投票システムをぶち込んで、ユーザー参加型にしましたしね。

敷居の低さを実現するのは、作品以外での創意工夫が重要なのかもしれない。

僕自身、「これだ!!」っていう解決方法はないのですが、意外とほかの業界を参考にするとヒントが出てきそうな気がします。

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